本を買った時は裏表紙のあらすじを見たはずなのだが、積読の間にすっかり忘れてしまった。
なので、ほぼ予備知識0の状態で読み始めた。
最初は、赤ん坊の取り違えの話かと思った。
その次は、生き別れの双子?
ではなぜ戸籍がそうなっている?
読む進めていくうちに、そんな単純な物語にありがちな話ではないことに気が付いた。
…で、クローンですか!?
となると、現実を飛び越えて、サイエンス・フィクションなんだかサイエンス・ファンタジーなんだか。
ミステリーというのは隠し玉が突飛過ぎる。
しかし、あり得ない話とも言い切れない。
そんなSFチックなミステリーの側面を持ちつつも、いや、そんな種明かしがあるとは思えないくらいしっかりと人間ドラマが描かれている。
無駄なキャラクターも無い。
綿密に組み立てられた物語である。
そういう緻密さは読んでいて気持ちがいい。
途中で、これはストーリー展開にご都合主義のキャラクターというだけかも、と思っていた人物も最後にきちんと繋がった。
一方、内容は考えさせられる。
いったいどこまでが不妊治療として許されるのだろうか。
渡辺淳一の著作「リラ冷えの街」を思い出した。
科学的に逸脱しているものではないが、不妊治療による人工授精を扱っている話。
不妊治療が招いた一つの物語、と私は記憶している。
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