映画の存在は、公開時からとはいわないがわりと前から知っていた。
ジェラール・ドパルデューをシラノに配す、なんて随分ベタ(笑)な配役だと思っていた。
最近になって初めてCSで視聴した。
ドパルデューがつけ鼻までつけて頑張っていた!
なんてことはどうでもよいのだが、この映画はお薦め。
ハリウッド的エンターテイメント作品を期待して観るとがっかりするタイプの作品かもしれない。
戯曲を戯曲らしく映画化しているからだ。
アメリカでは設定を現代に置き換えて作った映画「愛しのロクサーヌ」(1987年)の方が、この正統派で作った映画よりも興行成績が良いようだから…。
シラノ演じるジェラール・ドパルデューがアカデミー主演男優賞のノミネートされているのだから、映画として認知されていなかったということはないだろうに…。
つまり、現代的お気楽娯楽映画、ではないのだ。
だが、むしろ、それがこの映画の良さだと思う。
素材である戯曲「シラノ・ド・ベルジュラック」の魅力を損なわせず、それに映画ならではの映像美と音楽を加えた。
ジェラール・ドパルデューの熱演あってこそなのだが(ほとんど台詞しゃべりっぱなし)、原作の戯曲の出来の良さを感じる。
戯曲というと、堅苦しいイメージがないでもないが、この作品は笑いあり涙あり、充分エンタテイメントしている。
ハリウッド的な娯楽映画ではないというだけだ。
主人公のシラノは17世紀に実在した人物をモデルにしている。
シラノ自身も著作を残しているのだが、彼をモデルにした戯曲の方が有名になってしまった。
劇中の登場人物、ロクサーヌ、ド・ギッシュ伯爵、クリスチャンにもそれらしき人物が実在するようだが、戯曲の話とは大きく異なっていて、とてもモデルとは言えないようだ。
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