映画史の中で、映画が衰退されると危惧された時期が何回かある。
まず最初はテレビの普及。
家庭で映像が見られるようになれば、映画館には行かなくなるのではないかというのはごもっとも。
ビスタサイズというやや横長の画面(スクリーンサイズ)はこの時に生まれたらしい。
確かにふる〜い映画はテレビと同じスタンダードサイズばかり。
テレビで劇場公開された映画を放映するのも、最初はすったもんだあったと聞く。
数年待てばテレビで観られるかもしれない、と思えば、劇場公開時に映画館に行く人は減るのではないかと思うのはやはりごもっとも。
その後、家庭用ビデオデッキが登場し、低価格化と普及が進み、映画はビデオをレンタルして観られる時代になる。
ここで窮地に追い込まれたのが、いわゆる名画座と呼ばれる映画館。
余談になりますが、「ぴあ」を買って映画上映情報をくまなく調べ、観たい映画を探していた時期がありました。
もちろん、新聞のテレビ欄もすみからすみまで眺めて、これ、という映画を探すのも日課でした。
一度訪れたチャンスを逃すと次はまたいつ観られるかわからない、そんな時代でした。
そんな頃、何回か訪れたのが、自由が丘にある名画座。
はっきり言って、椅子座り心地をはじめ設備はロードショー館に比べるとかなり劣るものでした。
その後、リニューアルして設備を一新したらしい、という噂を耳にしましたが、
今年の2月に閉館になってしまったそうで…。
今では、ディレクターズカット版やリニューアルプリントによるリバイバル公開でもない限り、映画館で古い映画にお目にかかる機会は少なくなった。
いわゆる名画座というものは今では姿を消してしまった。
もちろん、姿を変え、形を変え、上映内容を変え、残っている所はある。
以前は、映画館でロードショーになってからテレビで観られるようになるまで、話題作になればなるほど、かなり待たされた。
…が、今では一年ほどでテレビで観られる。
WOWOWやスターチャンネルのような有料プレミアムチャンネルだったり、CS放送のPPV(ペイパービュー)だったり、タイアップがあれば地上波で観られることもある。
テレビの多チャンネル化も大きく貢献していることは言うまでもない。
セル製品(ビデオやDVD)にいたっては公開後、半年程度で発売されてしまう。
すぐに商品化されるのであれば、映画館が流行らなくなる、と危惧されたのだが、現状をみる限りその影響は皆無のようである。
流行らないどころか、シネコン型の映画館がどんどん増えている。
ところが最近のシネコンというのは、スクリーンが小さいらしい。
もちろん、そこの一押し目玉作品がかかる場所はそれなりの大きさののスクリーンを用意しているようだが、そこを外すと決して大きいとは言えないらしいのだ。
ホーム・シアターも身近になってきたというのに、なぜ小さいスクリーンの映画館にわざわざ行くのか?
もちろん、ミニ・シアター系の作品もありますが、それはまた別の話。
どうせ行くなら、できるだけ大きいスクリーンの映画館に行きたい。
ハリウッド系の作品ならば特に。
ところが、映画館情報を観ても、スクリーンサイズというのはなかなか載っていないこともある。
音響については、必ずと言っていいくらい記載されているのになぜ?
音響の良し悪しも、設備がある、というだけではなかなか判断がつきにくい。
古い映画館を改装したところは、いくら最新の音響に対応していても、その効果を充分に発揮しているとは言えないからだ。
スクリーンサイズについても、つきつめていくと奥が深い。
シネスコ、ビスタ、スタンダード…、ビスタはヨーロッパサイズもある。
すべてのタイプに対応している映画館はそうは多くない。
しかし、気にする人が少ないのか、情報も少ない。
こだわりを持って映画館を選ぼうとするとなかなか苦労する。
でもわざわざ映画館に行くときは、こだわりたい。
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