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奇想天外、奇々怪々な物語。 舞台は18世紀のフランス。 その頃に書かれたのではないかと思わせるような雰囲気を持っている。 つまり最近よくあるタイプの小説のようにハリウッド的映像がすぐ思い浮かぶような文章ではないということ。 知られざる古典を発掘したようなそんな気になる。 …が、著者は1949年ドイツ生まれ。 この物語は1985年に世に出され、1987年に世界幻想文学大賞を受賞した。 幻想文学ねぇ…。 どこへ分類したらいいのかよくわからない、今までこんなタイプの話はあったのだろうかと思わせる。

主人公は体臭を持たないが嗅覚が恐ろしく優れている。 そして並外れた生命力を持つ。 こんな設定がそもそも“幻想”なのだが、そこが物語の出発点。 面白い。

“ある人殺しの物語”という副題がついていると次々に殺人が為されるのかと思ってしまうがそんなことはない。 しかし主人公が殺人という行為にまったく罪の意識を持っていないことは確かだ。 善悪の判断というものが彼には欠落している。 嗅覚が恐ろしく優れている以外にも彼は尋常ではないのだ。

7年間の洞穴生活の前後で主人公のキャラが変化しているのが気になる。 洞穴生活のせいだろう、と言ってしまえればいいのだが、さらに野生化した生活の後、スマートに人間社会に溶け込んでいくのがややご都合主義的。 そんなスマートさを彼は持ち合わせていたのか。 あるいはいつ身に付けたのか。 気になったのはそれくらい。 猟奇的な話なので万人にお薦めするようなものではないが、そんなにグロテスクではないので、一回読んで見る価値はあり、と言っておこう。

され、これも映像化作品の原作だ。 原作者は長らく映画化を渋っていたようだ。 ダスティン・ホフマンやアラン・リックマンが出演しているので興味津々。 後半部分を重点的に映像化して前半は端折るかと思いきや、予告編などの映像を見るとストーリーはわりと原作に忠実に運んでいるような感じ。 とはいえすべてに忠実なわけではなく、赤毛の少女にまつわる部分はかなり膨らませて脚色して…と話を作っているような感じ。 ま、それはしょうがないか…。

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