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文庫版で上中下巻からなる大作。 さすがに読み終えるのに時間がかかってしまったが、決して読みにくかったわけではない。 最初にほとんどの登場人物が出てくるのでちょっと戸惑ったくらい。 「ハゲタカ」の後にこれっていうのは、ある意味、似た路線でハードだったというかなんというか。 この作品に関して著者は特定のモデル説を否定しており、発表時期は太陽銀行と神戸銀行の合併前である。 しかし、作品では“太陽神戸銀行”が“三井銀行”に合併されるところまでスコープとしてストーリーに入っているではないか! いや合併への経緯の中身はまったく違うのかもしれない。 そもそも小説中のの大同銀行のモデルは太陽銀行ではないらしい。 が、大きい意味での銀行の再編の流れの方向は同じであり、とてもリアル。

さて、読み始めて最初の第一印象。 これって、日本版「ダラス」ですか?(笑) いや、アメリカのテレビドラマ「ダラス」が製作された方が後なので、こういう言い方は正しくないのだろうが、とんでもなくお金持ちの一族がいてその一族が経営する会社があって…という設定は同じ。 でも映像作品で見たら「ダラス」のような印象は…持たない...に違いない。 「ダラス」は石油、こちらは銀行ということでそのビジネス性の違いから、国民性の違いから、やはり似て非なるものだ。 しかし、日本が舞台でもこういうドラマが成り立つのか...としみじみ。 (今頃、思うな、という話もあるかもしれない。)

ぐぃぐぃとひっぱりつつ、大介悲願の銀行合併まではいい。 その後どうやってまとめるのかと思ったら、鉄平が自殺してしまうという展開は…なんだかいただけない。 発表された時代を考えるとこういうキャラになってしまうのも止むを得ないのだろうか。 (「ダラス」でも最終回で“悪役”のJ.R.が引金を引くんだっけ…。)

なんだか続編を考えたくなるような終わり方だ。 もし続編を考えるとすると、鉄平が生き残っていないのは残念。 美馬がもっと活躍するような話になるのかな。

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