映画館に行きそびれたので、DVD で観た。
小粒で地味だけど世間的には比較的評価の高い映画、というところであろう。
深く考えなければ、なかなかの秀作と言えると思うのだが、いろいろ細かい突っ込みをしたくなる部分が多々ある。
映画として(原作があるそうなので、原作としてもそうだと思うが)一番描きたいことは、非日常におかれた主人公の心情なんだと思う。
そしてその非日常というのは、何をやっても「ターン」して元に戻ってしまう、ということ。
だから、その非日常が生まれる原因としての交通事故とか植物状態というのはあまり意味をなさないのだろうと思うが、パラレルワールドとして描かれる一方の現実の世界があまり現実的でないのが少々気にかかる。
植物人間を扱った映画やら小説やらはいくつか知っている。
それだけに、現実の世界での、植物状態に陥った主人公の状態が美しすぎるのが、非現実的に思えてならない。
美しく意識を取り戻すには仕方のないことなのだろうけど…。
しかし、これは野暮な突っ込みかもしれない。
では、非日常の世界の方はどうか。
こちらもやや御都合主義で描かれてはいないだろうか。
テレビや電話は絶たれているが、電気やガス、水道といったライフラインは生きているようだ。
銀行のネットワークも動いている。信号も機能している。
その機能するものと機能しないものの境目が、謎。
また、同じ日常を繰り返しているはずなのに、突如として、現実世界の進行とつながっている部分が出て来る。
これは、非日常におかれた主人公の心境の変化(あるいは、現実世界で主人公が回復しかけている)のなせる技と解釈できるのかもしれないが、矛盾を感じる点である。
いろいろ言い訳はできるのかもしれないが、SF だのミステリーと言える程、整合性に納得できる説明はなさそうに思える。
そのような様々な矛盾を考えなければ、それなりに楽しめるストーリーだと思う。
映像的には、無人の街が凄いと思う。
一昔前ならば、東京〜新宿、なんていうロケを選ばず、撮影にあたって本当に人払いが出来るような地方都市を選んで、撮影したのだと思う。
が、CGを駆使して、合成として無人の街の映像を作り上げている。
普段の東京〜新宿辺りを見慣れている目には、その映像だけでもとても新鮮に映る。
無人の街にいるという主人公の感覚を共有できそうな、映像マジックだ。
雪などもCG合成で作り出しているようで、演技する方は無いものを見て、あるいは、あるものを無いものとして演技しなくてはならないので、大変なのだろう。
地味めの映画なのだが、意外にCGを駆使しているのはびっくりした。
今となっては当たり前の技術なのだろう。
そして、BGMがほとんどないのがまた良いところかもしれない。
それだけに、ときおり流れるピアノのインストゥルメンタルのメロディが染みる。
そして、終盤では、ピアノソロでなくアンサンブルになっているのが、
なかなか憎い演出である。
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